イギリスがEUを離脱して3カ月になりますが、状況はどのようなのでしょうか?簡単に言うと、“あまり良くない”というのが答えです。 最初の影響はすぐに実感されました。イギリスの漁師はEUに非常に大きな数量(例えば、2018年には34万2,000トン)の魚介類を輸出していましたが、新しい規制によってEUへの輸出が簡単ではなくなり、イギリスの漁港は大量の死んだ魚の臭いで満ちていました。1月の輸出量はなんと83%も減少しました。押し寄せる新たな衛生に関する規制や通関規制よって、例えば、ただサンプルのみを検査するのではなく、トラックいっぱいの魚を検査しなくてはならないのです。 イギリス各地のビジネスマンはEU関連の新たな事務手続きの山に追われ、手間がかかるだけでなく経費もかさんでいます。 例えば、イギリス最大手のスーパーマーケットに商品を卸しているあるイギリスの食品会社は、ブレグジット後に国境を越えて肉を輸送する手続きの複雑さのために、自社のソーセージにイギリスの豚肉を使用することをやめる決断をしました。 1月以降に2回、イギリスの豚肉を年間75トンのオーガニックソーセージに加工しているドイツへの輸送を試みましたが失敗に終わり、ヘレン・ブラウニング・オーガニック製品の製造販売を行っている会社はイギリスの農家を支援することを諦めざるをえず、デンマークの供給業者に切り替えたと話しています。 ヴィッキー・マックニコラス代表取締役は「輸出するための費用、手続きの複雑さ、そして、かかる時間と労力を考えると、それだけの価値はない」と述べています。このニュースは、ブレグジット以降、豚や豚肉のEUや北アイルランドへの輸出に問題が生じているため、政府に業界が直面している“未曽有の障害”について警告してきたイギリスの養豚農家にとって、さらなる痛手となることでしょう。 食品加工業の業界団体、フード・アンド・ ドリンク・フェデレーションが英国歳入関税庁の数字を分析したところ、多くのより小さな食品製造業社は、ブレグジット以降、EUに製品を輸出することから“締め出されている”ようです。 牛肉の輸出は1月には昨年同月の4,000万ポンドから300万ポンドへと92%減少し、豚肉の輸出は87%、そしてラムと羊の輸出は45%減少しました。これらのすべての肉製品はイギリスのEUへの輸出の上位10位に入っている品目です。 また音楽にも驚くべき影響が及んでいます。音楽業界リーダーによると、ミュージシャンはツアーをキャンセルすることや、仕事のオファーを“毎日のように”断ることを余儀なくされています。 イギリスのミュージシャン、俳優、パフォーマーに対する厄介な新しい規制では、いくつかのEUの国で彼ら自身やそのクルーが仕事を行うためには、労働許可や高い費用を要する他の登録が必要となります。また、機材を輸送する業者はイギリスに戻るまでに域内の3か所のみにしか滞在することができず、業界関係者は、これでは大陸でツアーを行うのは不可能だと言っています。 一方、イギリス政府はこれらの問題を解決するために多くの約束をしていますが、今のところほとんど何も行われていないように思われます。ボリス・ジョンソン首相と政府はブレグジットを望んでいた張本人です。今、その望みは叶いました。問題は、望みが叶った今、それについて何をするのかということです。 |
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7月 2022
筆者Jeff |