今年6月下旬から7月上旬にかけて、英国のテレビ局や新聞のトップニュースと言えば、「熱波」でした。西ヨーロッパ全域を襲った熱波によって、例年の平均をはるかに超える気温が続きました。英国での最高気温は、ロンドン近郊のヒースロー空港で観測された36.7度です。これは1870年代半ばの観測開始以来、イングランド国内における最高気温です。日本でも、この数週間後に、群馬で38.5度、東京で34.8度、神戸で36.0度というイングランド国内の最高気温に匹敵する気温が観測されました。両国の違いは、日本では夏にこの程度の気温になるのが決して珍しくないのに対し、英国では非常に珍しいということです。
英国国内で最も暑い地域は南東部のロンドン周辺でしたが、他の地域でも記録的な温度が観測されました。私が育ったイングランドのペナイン山脈にある町では、7月の平均気温17.0度に対し、気温30.0度にまで達しました。これは暑いです。スコットランドとの境界があるイングランド北部のキンロス村では、温度計が29.4度を示しました。これは、スコットランドの過去最高気温である32.9度に近い気温です。 さて、この熱波により一体どんなことが起こったでしょうか。まず、政府がレベル3の「熱波」に関する健康警報を発令しました。英国公衆衛生庁(PHE)は、運動を避けて十分に水分を取るよう警告しました。高齢者のための慈善団体「Independent Age」は、高齢者は特に危険であると用心を呼びかけました。さらに、道路が溶け出したり、線路が歪んだりしたという報道もありました。多くの地域で、渋滞に巻き込まれた旅行者や運転手たちにペットボトルの水が配られました。 日本人にとって、この程度の気温は大したことではないかもしれません。しかし、英国では非常に珍しいことでした。英国では、一部の職場はエアコンが効いていますが、一般家庭やアパートでエアコンを設置しているのは、わずか0.5%にすぎません。つまり、体を冷やす場所がどこにもないのです。PHEは、従業員が涼しい時間帯に通勤し、公共交通機関の通勤ラッシュを避けられるように、企業に対して時間調整を要請しました。 そうです、道路が溶けたのです。国内のあらゆる地域で、道路が溶け出す事態が起こりました。英国の路面は50.0度で溶け始めるものがほとんどで、80.0度までの気温に対応できる道路は5%ほどしかありません。しかも、この温度は日陰での計測値であり、道路は熱を吸収する黒色であることを忘れてはなりません。直射日光下の道路は簡単に50.0度に達するでしょう。緊急修理のため、ロンドンのM25環状高速道路が通行止めになりました。 さらに、線路も熱で歪みました。ご存じだと思いますが、線路と線路の間には隙間や「伸縮継目」があり、膨張に対応しています。この隙間が塞がると、厄介なことになります。ロンドンのウォータールー駅では、線路の歪みによって大幅な遅れが生じました。他の場所でも高温になった線路の損傷を避けるため、制御装置によって速度制限をかけました。 英国では人々がこれほどの暑さに慣れておらず、日本では皆が普通だと思うような気温にもインフラが対応できないのです。最後に「クールビズ」運動について、ひとこと言わせてください。「クールビズ」運動では、職場の温度を28.0度に保つよう奨励されていますが、この温度は誰が決めたのでしょうか。私にとって、28.0度は涼しいどころか大変な暑さです。 |
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7月 2022
筆者Jeff |