長距離犬ぞりレースを知っていますか?アイディタロッド・トレイルレースというのを聞いたことがありますか? アイディタロッドは毎年3月上旬に行われる、アラスカのアンカレッジからノームまでの犬ぞりレースです。“The Last Great Race(最後の大レース)”と謳っているだけあって、その距離は1,000マイル(1,609キロ)を超えています。 コースは過酷で、ツンドラ地帯や松の木の森を駆け抜け、丘や山の小道を超え、川やベーリング海の氷までも渡ります。 1チームは"マッシャー“と呼ばれる犬を指揮するヒトと14頭の犬からなっています。具合の悪い犬が出た場合、その犬はチームから離脱します。ゴールするには少なくとも5頭の犬がリードに繋がれていなければなりませんが、通常はそれよりも多く、たいてい8~12頭の犬がレースを走り切ります。 各チームは途中でチェックポイントを通過します。チェックポイントではタイムが知らされ、犬たちは獣医の診察を受けます。ほとんどのチェックポイントは自然が残るアラスカの村々にあり、マッシャーは温かい食事や犬たちの休憩のために立ち寄ることができますが、そのまま通過することもあります。マッシャーは常に自分自身よりもまず犬たちの世話をし、わらの上に寝かせ、温かい食べ物を用意します。チームがコースのどこででも食べたり休憩したりできるように、マッシャーは各自で食べ物、調理器具、わらを携帯しています。コース上でほとんどの休憩を取るマッシャーもいれば、家の中でしばしリラックスするマッシャーもいます。 アイディタロッドのレース中、チームが必ず取らなければならない休憩が3回あります。それは、いずれかのチェックポイントで取る24時間の休憩が1回、ユーコン川沿いのどこかのチェックポイントで取る8時間の休憩が1回、ノームから約77マイル(123キロ)のホワイトマウンテンで取る8時間の休憩が1回です。 レースでは“アイディタロッド・エアフォース”が大きな役目を担っています。有志のパイロットがマッシャーの用意した物資“ドロップ・バッグ”をチェックポイントまで届け、また、チームから離脱した犬をコース外へ救出します。 “マッシング(犬ぞり)”は20世紀前半にはとても人気がありましたが、1960年代のスノーモービルの台頭によってほとんど消えかけていました。そこで、犬ぞりを復活させるため1973年に最初のアイディタロッドレースが開催されました。優勝したのはディック・ウィルマースとリード犬のホットフットで、タイムは20日と49分81秒でした。それ以降マッシングの人気が高まり、アラスカで重要なポピュラースポーツとなりました。トップマッシャーの名前はみんなに知れ渡っています。 年月とともに、コースが整備され、犬の栄養についての知識が大きく増えたことによりタイムが縮まってきています。最も速かったのは2017年にミッチ・シーヴィーとリード犬のパイロットとスウィフトが8日と3時間30分14秒でノームの“バールドアーチ(ゴールを示すアーチ)”に辿り着いたレースでした。これはミッチの3度目の優勝で、この時彼は最高齢の優勝者となりました。 最も接戦だったのは1978年のディック・マッケイとリック・スヴェンソンとの争いでした。マッケイのリード犬の鼻がスヴェンソンのリード犬より1秒早くにフィニッシュラインを通過しましたが、最初にゴールを切ったのはスヴェンソンの体でした。議論はあったものの、結局、勝者はマッケイとなりました。スヴェンソンはその前年と翌年に優勝しました。合計でスヴェンソンは最多の5回優勝しています。女性で2番目の優勝者となったスーザン・ブッチャーなど6人のマッシャーが4回優勝しています。 マッシャーのほとんどはアラスカ出身ですが、アメリカの他の州出身のマッシャーもいます。また、他国からやって来る外国人選手もいます。スイス人のマーチン・バザーは4回優勝していますし、2回優勝のロバート・ソーリエや、今年、リード犬のK2とバークと共に6時間という大差で優勝したトーマス・ヴェルナーはノルウェー人です。 犬ぞりの犬たちは走ることが大好きです。最近のレース犬は混血のハスキーで、スピード、脚力、忍耐力、そして、もちろん走りたいという気持ちを持つように育てられています。犬たちとマッシャーの絆はとても強く、マッシャーはレース後に犬を一頭ずつ褒めて撫でてあげます。マッシャーの走る準備が整うと、犬たちは飛び起きて遠吠えを始めリードを引っ張ります。スタートしたくて仕方ないのです。それは素晴らしい光景です。 |
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7月 2022
筆者Jeff |