ロンドンについて何か読んだり、ロンドン旅行を計画したりする時に、
ロンドンがたくさんのシティでできていることに驚くかもしれません。英国では、ロンドンというと一般にバラ(borough)と呼ばれる行政区が32含まれる大ロンドン(Greater London)を意味します。大ロンドンはシティ・オブ・ウェストミンスター(City of Westminster)を併せ心部(Inner London)と外周部(Outer London)に分割されます。でも昔のシティ・オブ・ロンドン(City of London)はそうではありませんでしたので、ちょっと厄介です。今回は英国のシティついてお話します。 まずシティ・オブ・ロンドンですが、これはシェークスピアやチョーサーの時代のロンドンの一部であり中心部でした。シティ・オブ・ロンドンは単にシティと呼ばれたり、スクエア・マイルと呼ばれました。スクエア・マイルは1マイル四方(2.9 km2)の意味で、シティはちょうど1スクエア・マイルだったからです。シティ・オブ・ロンドンは自治行政区域で、独自の警察組織も持っていましたが、今では金融の中心地で、イングランド銀行や証券取引所など多くの金融機関のほか裁判所などの所在地となっています。 シティ・オブ・ロンドンはロンドン市自治体(Corporation of the City of London)で、ロンドン市長とは別の市長が統治しています。人口はたったの1万1千人程度ですが、毎日33万人もの労働者であふれ日中は活気に満ち、一方夜になるとめっきり静まり返る地域です。 昔はこのシティならではの横顔として、ここで営まれるビジネスは市民投票で決めてよいことになっていました。これは他のシティでは見られなかったことです。このためいつも新しいビジネスがこのシティから広がっていきました。 シティ・オブ・ロンドンの大半は今でも人家がまばらだった中世時代の街路地図に一致する街並みを留めており、プディング・レーン、ブレッド・ストリート、ビショップ・ゲート(Bishgopsgate)といった古風な地名を残す狭い街路があります。一方、今ではそこに高層ビルも混在しています。その中には有名なセント・ポール大聖堂やモニュメント(Monument - ロンドンの大火記念堂)もあります。またロンドン塔がこのシティの東側を出てすぐのところにあります。 ロンドンは繁栄するにつれ、ウェストミンスター寺院西側周辺をも取り込みながら隣接地域まで領土を増やしました。ロンドンにはかつて国王が住んでいたウェストミンスター宮殿もあります。現在ここは国会議事堂になっています。そのすぐ右隣にはビッグベンがあります。この地域はイングランド時代から始まり、後に英国になっても千年以上も政治の中心地となっています。 ウェストミンスターは、オックスフォード通りからボンド通り地域にかけてショッピングの本拠地でもあります。またピカデリーからソーホー地域にはエンターテイメント街が広がります。これら2地域は総称してウェスト・エンドと呼ばれ、英国の文化的中心地となっています。ウェストミンスターにはこの他にもバッキンガム宮殿、ホワイトホール(英国政府)、ウェストミンスター大聖堂など数多くの有名な歴史的建造物があります。 名称はシティ・オブ・ウェストミンスターですが、ここは大ロンドンの行政区域の一部となっています。大ロンドンは、18世紀から19世紀にかけてロンドンが隣接する村や町を吸収し領土を広げて行った時代に形成され、中心的バラは当時カントリー・オブ・ロンドンと呼ばれ、外周部はロンドン・バラと呼ばれました。 12のバラからなるロンドン心部はヨーロッパでも有数の富裕層エリアで、アラブ国王やロシアの新興財閥など世界の大金持ちの多くがロンドン北部、東部に居住しています。一方ロンドン北部と西部は貧困層の居住区になっています。 ロンドン心部はイースト・エンドの呼称で知られますが、実はシティの西側に位置します。ここは古来労働者階級の居住区域で、ロンドンの下町っ子の家があったり、迫害されたユダヤ人やアジアなどの多くの国からの移民が押し寄せた地域でもあります。昔は波止場を再開発した(Dockland)の拠点でもありましたが、今ではロンドン第2の金融の中心地となっています。 テムズ川の南側は開発が遅れていますが、芸術の中心地であるサウス・バンク(テムズ川をはさんでウェストミンスターの逆側に沿った地域)には画期的建造物のロンドン・アイやフェスティバル・ホールなども見られます。 テムズ川南側には、世界の標準時の基礎となる経度ゼロ度のグリニッチ子午線が通る海事博物館と王立天文台があるグリニッチ(大ロンドンの特別区)があります。 ロンドンにあるさまざまな地域について話してきました。ロンドンについて何か読んだり、ロンドンを訪れた際に疑問に思った時のお役に立てればと思います。ウェスト・エンド、イースト・エンド、シティ、サウス・バンクといった言葉を耳にした時、今回の話を思い出していただければ幸いです。 コメントの受け付けは終了しました。
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7月 2022
筆者Jeff |