データを明確に提示することは論文作成において必須の技術です。しかし、これは母国語でも難しいため、日本人のみなさんではなおさらです。ここで、避けるべきよくある間違いとライティングに有効な文のパターンを見てみましょう。
●よくある間違い 次の文を読んでください (これは実際の論文からの引用ですが、情報保護の観点から改変を加えてあります): a)“The number of patients who developed thrombocytopenia corresponding to the criteria for suspension of treatment was 225.” この文は許容できる文でしょうか。実はこの文は日本人著者がデータを報告する際の極めて 一般的な形式をとっています。では英語を母国語とする人はこれをどうとらえるでしょうか。 (問題なし[ just fine]) (戸惑う/イライラする[annoying]) (わかりにくい/混乱しやすい[confusing]) 私の回答は(戸惑う/イライラする[annoying]) です。さすがにこの文は単純すぎてわかりにくくはなり得ません。では、なぜ戸惑うのでしょうか。それは、「予測される位置」の考え方 を書き手が無視しているからです。英語を母国語にする人は、患者数が文の終わりではなく、初めのほうで言及されることを想定します。以下はその例です: b)“A total of 225 patients developed thrombocytopenia corresponding to the criteria for suspension of treatment.” c)“Two hundred and twenty‐five patients developed thrombocytopenia corresponding to the criteria for suspension of treatment.” 以下の例もよくみかけます。 d)“The patients ranged in age from 83 to 45 years and included 74 males and 79 females.” (問題なし[ just fine]) (戸惑う/イライラする[annoying]) (わかりにくい/混乱しやすい[confusing]) ここでは2つの回答が考えられます。この文は間違いなく「戸惑わせる、イライラさせる」文であり、同時に「わかりにくく、混乱しやすい」文ともいえます。英語を母国語とする人にとって戸惑う点が二つあります。まず一つ目は、年齢の範囲を‘83 to 45 years’としている点です。私たちにとっては年齢が‘45 to 83 years’であることが望ましいです。二つ目は、被験者全員が成人であることが年齢範囲から明らかであるにも関わらず男女をそれぞれ‘males’、‘females’と呼んでいる点です。被験者全員が成人であれば、私たちは‘men’と‘women’を用いる方が自然です。英語を母国語とする人がこの文を読むと、「報告されている年齢範囲は間違いだろうか。だとすると被験者の何例かは小児なのだろうか。それとも著者が単に誤って‘males’と‘females’を使ったのだろうか」などと考えるため、混乱が生じるのです。 では、今度はあなたがリライトしてみてください。 “The patients .” 適切な回答は次の通りです: “The patients ranged in age from 45 to 83 years and included 74 men and 79 women.” なお、一旦被験者が成人男性及び成人女性 (男子及び女子ではなく) であることを明確に打ち出せば、その後は、英語が母国語の人を戸惑わせることなく‘male’や‘female’を使用することができます。次の文はその例です:“The patients ranged in age from 45 to 83 years and included 74 men and 79 women. There were no male patients with diabetes, although 10 of them had impaired glucose tolerance.” コメントの受け付けは終了しました。
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筆者
Dr.McQuire |