アリカンテ空港から南へわずか40分、スペインのコスタブランカに太陽の光がさんさんと降り注ぐ小さな英国があります。スペイン国内で、いえ、恐らく世界で最も大きな英国人居住地であるオリウエラコスタです。
スペインは、英国の退職者が余生を過ごす場所として昔から人気があります。年間300日は日光が降り注ぎ、住宅が安く、医療サービスが素晴らしい上に完全無料だからです。では、人々を惹きつけるオリウエラコスタの魅力は何でしょうか? まず、この町は、他のヨーロッパの国々の人も少しは住んでいますが、ほぼ英国です。海岸沿いの約15 kmに渡るこのビーチリゾートには、3万人ほどが住んでいると思われます。その文化はとても英国的で、ローン・ボウルズ**が最も人気の娯楽です。その他のアクティビティは、チェス、クリベッジ、ブリッジ、ブラスバンド、ゴルフ、ガーデニング、山歩き、そしてモリス・ダンス (伝統的なフォークダンス) などがあります。スーパーマーケットは英国の食べ物であふれ、町の人々が温かく迎えてくれるため、新参者でも寂しさや疎外感を感じることは決してありません。 スペインは何故そんなに魅力的なのでしょう?それは、何と言っても物価が安いことです。車、自動車保険、食べ物、住宅のすべてが英国よりはるかに安いです。4万ポンドで一般的なフラットが手に入り、10万ポンドで庭付きのとても素敵な家を買うことができ、15万ポンドあればプール付きの豪邸を購入することができます [記事執筆時の為替レートでそれぞれ650万円、1610万円、2410万円]。これらの家があるのは、高層ビルのない魅力的な地域ばかりです。 EU加盟国として、英国人には欧州健康保険カードが与えられ、登録住民はフルパッケージの医療サービスを無料で受けることができます。個室や英語の通じる医師の手配もこのサービスに含まれています。 しかし、先行きは不透明です。EU離脱の是非を問う国民投票が近づき、人々は不安を感じています。もし英国人が「ブレグジット (英国のEU離脱)」に投票したら、状況は大きく変わってしまうでしょう。 まず、医療給付がなくなり、多くの定年退職者は英国に戻る決断を迫られるかもしれません。次に、英国がEUから離脱するとポンドの価値が下がり、スペインでの生活費が高くなる可能性があります。これにより、英国人の住宅に対する需要がなくなると、現在所有している住宅が売れなくなるでしょう。最後に、英国の国民年金の増額が凍結される可能性もあります (EU圏外に住んでいる英国人の場合と同様)。日差したっぷりのスペインで定年後の生活を存分に楽しんでいる英国人にとって、これらの事態はすべてとても恐ろしいことです。ブレグジットによって、100万人以上の定年退職者とEU圏内で働く120万人の英国人が帰国することになるかもしれません。これらの社会的変化は大きな影響をもたらしかねません。何が起こるかは様子を見るしかありません。 *シャングリラはジェームズ・ヒルトンの1993年の小説『失われた地平線』に描かれている架空の場所です。この孤立したヒマラヤのユートピアでは、すべての人が仲良く暮らし、ゆっくり歳をとります。シャングリラは地上の楽園の代名詞となっています。 **ローン・ボウルズは英国のとても古いゲームです。1588年にスペインの無敵艦隊 (アルマダ) が英国の海岸沖で発見された時、サー・フランシス・ドレイクがローン・ボウルズに興じていたことは有名な話です。ローン・ボウルズは、芝生の上でボールを使って行われることを除き、カーリングに少し似ています。 |
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7月 2022
筆者Jeff |