さあ、交渉がまとまりました。イギリスはEUと今後の関係に関する条件に合意する法案を可決しました。この交渉は1年以上続き、離脱日である12月31日のわずか数日前に合意に達しました。その後この合意はヨーロッパ議会の承認を得てイギリスの上下院に提示されました。議員たちは1200ページに及ぶ協定についてたった4時間半で議論しなければなりませんでした。野党労働党党首サー・キア・スターマーと同党員の議員のほとんどは、中身の乏しい協定でもないよりはましであるという主張のもと法案を支持しました。 さて、協定の内容はどのようなものなのでしょうか?与党保守党のリーダーたちは交渉がまとまったことを自画自賛していますが、他の人々はもっと批判的です。トーリー党前党首のテリーザ・メイは自分達のほうがより良い協定を交渉できていたけれど議会を通らなかったと述べています。この協定によって国民の生活はすべての面でより困難になるだとうと言う人もいます。 協定合意においては自由貿易が重要ポイントの一つでしたが、自由貿易のためにはイギリスとEUのあいだで多くのお役所的な事務手続きが行われることになります。お金がたくさんかかりますし、取引のスピードも落ちるでしょう。 また、特に金融サービスなど、イギリスからEUへの輸出の大部分を占めイギリス経済の80%を構成するサービスセクションに関しては細かい取り決めがなされていません。イギリスが規制や別の関税以外の障害に直面する可能性があるのかどうかははっきりしていないのです。 さらに、ヨーロッパの犯罪データベースへのアクセス権はなく、イギリスのバリスター[法廷弁護士]やソリシター[事務弁護士](法律家の種類)はEUでも認められますが、他のイギリスの専門資格は資格として認められません。また、EUに居住し働いているイギリス人の自由は制限されることになります。人権や環境問題もこれまでそのようなことを気にかけてこなかったトーリー党の強固な右派メンバーによる危機にさらされています。 イギリス経済に占める割合はごくわずかであるものの漁業は最後まで交渉の争点となり、合意された協定はイギリスの漁師から激しく批判されました。 ジャパンタイムズは「日本の自動車メーカーにとってブレグジットの協定はほとんど意味がなく、また合意が遅すぎた」と報じています。 協定のこのようなマイナス面は、規制から解放されることによって経済が活性化されると豪語しているトーリー党のリーダーたちによって上手くごまかされています。この30年間、トーリー党のヨーロッパ懐疑主義の中心テーマは、EU加盟国であることによってイギリスは金銭的な負担や厄介な官僚主義を背負わされ、経済成長の足を引っ張られているというものでした。 今ついに彼らの道が開けたわけですが、その主張が真実であるかどうかはこれから明らかになるでしょう。 |
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7月 2022
筆者Jeff |