時々、世界経済などに関する記事を読んでいると、馴染みの薄いめったに使用されない単語に出くわすことがあります。例えば、連邦準備制度理事会FRB(米国中央銀行制度、The Fed(フェド)と呼ばれる)のアラン・グリーンスパン議長(当時)は、2005年の米国上院委員会における証言で次のように述べています。
“For the moment, the broadly unanticipated behavior of world bond markets remains a conundrum. Bond price movements may be a short-term aberration, but it will be some time before we are able to better judge the forces underlying recent experience” (目下、想定外の債券市場の動きは謎のままだ。債券価格の動きは一時的な異常現象かもしれないが、昨今の経験の根底にある力を理解するには、まだ時間がかかるだろう) この発言の中で難解な単語は、「conundrum(謎)」です。「aberration(異常現象)」や「想定外(unanticipated)」も難しいかもしれません。グリーンスパンは、最近の債券市場の動向の原因が「理解しがたい」という意味で「conundrum」を使っています。「conundrum」の正確な意味は、「複雑かつ困難な問題である」と定義されています。グリーンスパンは、若干、拡大解釈して使ったのでしょう。この発言は「グリーンスパンの謎」として、広く批判の対象となりました。評論家によると、実際に債券安へと導いたのはThe Fed(フェド)自身の政策だったのです。 グリーンスパンが新しい意味で表現を用いたのは、このときが初めてではありません。1996年の株式市場バブルの初期段階を、「irrational exuberance(不合理な熱狂)」と表現しています。厳密にグリーンスパンが何を言おうとしたのか定かではありませんが、この2つの単語は通常一緒に使用されることはありません。 現在、米国のニュース用語に「sequester」という単語があります。米国における連邦予算の「sequester(強制的に削減する)/sequestration(強制削減措置)」とは、2013年3月に成立した連邦政府歳出の特定分野に対する予算削減を意味しています。2011年に制定された強制的削減のことです。強制削減措置は目下、大きな論議になっていて、互いに非協力的な米国立法府各部門の無能ぶりが露呈しています。「sequester」には、他にも様々な意味があります。例えば、債権者による財産の差し押さえ、「jury sequestration(陪審員隔離)」(裁判中に陪審員団を隔離すること)、大気中の二酸化炭素を捕捉して長期間貯留するプロセス「carbon sequestration(炭素固定化)」などが挙げられます。 日本に関連した目下のキーワードは、「Abenomics(アベノミクス)」でしょう。言うまでもなく、首相の名前と「エコノミクス」を合体させたものです。「アベノミクス」は依然として疑問視する向きが多いものの、一般的には世界中のメディアから好意的に受け止められています。「アベノミクス」の主眼の1つは、「量的緩和策(QE)」です。これは市中銀行やその他機関から金融資産を購入する際、中央銀行が用いる異例の金融政策です。通常の政策では、金利を安定に保つために国債を売買します。QEには、通貨を発行することで国の経済を活性化し金利を上昇させる効果があります。つまり、「アベノミクス」の主な目的の1つであるインフレ効果を持っているのです。 もう1つ、近頃頻繁に聞く言葉として、「fracking(フラッキング)」があります。「hydraulic fracking(水圧破砕法)」とは、液体の圧力を使って岩層に割れ目を作り、内部に閉じ込められている石油や天然ガスを解放する採掘プロセスです。激しく賛否両論がある非常に問題の多い方法です。反対派によると、この方法は大気や水に多大な環境的影響を及ぼすおそれがあり、一部の国では禁止されています。しかし、英国は最近になって自国の禁止令を廃止し、強い規制を課した上で、フラッキングの再開を決定しています。 今回はここまでにします。ここで紹介した馴染みのない単語に出会っても、次はきっと理解できるはずです。 コメントの受け付けは終了しました。
|
過去の記事を読む
7月 2022
筆者Jeff |