ヨーロッパとほとんどの国とイギリスがコロナウイルスの対応に追われている状況で、最近は人々のブレグジットへの関心が薄れていますが、4回目の協議が6月の初旬に始まる予定です。しかし、成果はあまり期待されていません。コロナウイルスの感染が拡大する前、ボリス・ジョンソン首相は議会にEUとの通商協議は6月までに終えることができると言っていました。ところが、交渉はあまり進んでいないようで、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官はジョンソン首相に対し、合意なき離脱とコロナウイルスのパンデミックというダブルの経済的打撃を避けたいのであればイギリスは約束を守らなければならないと警告しました。ジョンソン首相が政治的宣言での約束を守っていないことを非難しています。首席交渉官は最後通告を出し、〝何がなんでも合意する“という考えではないことを示しました。 来年1月に期限切れとなる現在の移行期間は、離脱後もイギリスが事実上EUにとどまることを意味するものです。しかし、最近の困難な状況にもかかわらず、ジョンソン首相は移行期間のさらなる延長はないとしています。ジョンソン首相は以前否定していましたが、来年1月よりイギリスの他の地域から北アイルランドに入るモノに対して税関検査や貨物検査が実施されることを議会が正式に発表したため、首相に対するプレッシャーはますます強まっています。通商や今後の関係に関する高官による協議が難航し、行き詰まっていると思われるため、ボリス・ジョンソン首相とウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との間で6月半ばに首脳会談が行われるのはほぼ間違いないでしょう。漁業権に関する合意の期限は6月30日ですが、合意に至る可能性は低いでしょう。漁業権の合意がなければより広範囲における自由貿易の合意はありえないとEUは主張しています。 一方、イギリスの小規模輸出業者は通商協議が決裂するのに備えて100億ポンドにおよぶ輸出をEUから他の地域へと移しています。アストン大学の研究者による調査ではイギリスの零細企業が南アメリカや東アジアの国々への営業を強化していることが示されました。この調査では5年間におけるイギリスの26,000社による340,000件の輸出取引を分析しました。研究者は極小の輸出業者がブレグジットの国民投票以来、46%もの新規輸出をEUからEU以外の市場に切り替えたことが示されたと言います。小規模の輸出業者の切り替え率は19%でした。公式発表では、企業が自由貿易圏から拠点を移さずに世界中の別の地域で売り上げを伸ばすことができているため、イギリスからEUへの輸出シェアは概して減少していることが示されています。しかし、すべての輸出入のおよそ半分にあたる年間約6,500億ポンドにのぼる取引が行われ、EUは今でもイギリスの最も重要な貿易相手の一つです。アストン大学経営学部の経済学者ジュン・デュー教授は「イギリスの輸出業者は追い込まれる前に先手を打っていることがうかがわれます。つまり、現在のイギリスとUKの通商協議の結果が出て、予期される新たな障害が現れる前に自分たちの製品を販売するための別の市場を世界中で開拓しているのです。もちろん、コロナ危機の影響下でも同じことが続くかどうかは状況を見守る必要があります。」と言っています。 やはりブレグジットの道のりはまだまだ長いようです。 ※ この記事は6月初旬に書かれたものです。 コメントの受け付けは終了しました。
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7月 2022
筆者Jeff |